1. NTT株価の急反発と背景 [1]

thumbnail NTTの株価は、通期業績予想が横ばいまたは減益であるにもかかわらず、2024年7月から急反発している。

1.1. NTTの株価動向と業績予想 [39]

  1. 株価の急反発 [39]
    1. NTTの株価は、通期の会社予想で営業利益が横ばい、最終利益が5.5%減と予想されているにもかかわらず、2024年7月から急反発している。 [39]
    2. 過去1年間はTOPIXを下回るパフォーマンスであったが、直近で回復を見せている。 [42]
  2. 直近の決算内容 [62]
    1. 2026年度第1四半期の決算では、営業収益が前年同期比10.9%増の3兆700億円、営業利益が4.9%増の4,251億円、最終利益が5.8%増の2,748億円と増収増益であった。 [62]
    2. しかし、売上の伸びに比べて利益の伸びは弱く、この決算内容だけで株価の急反発を説明するほどの力強さはない。 [68]
  3. 通期業績予想 [72]
    1. 通期予想では、営業収益が前年比4.5%増の15兆円、営業利益が0.2%増の1兆7,100億円と横ばい、最終利益は5.5%減の9,800億円と減益を見込んでいる。 [72]
    2. この数字だけでは、株価の急反発の理由を説明できない。 [75]

1.2. NTTの事業セグメントと収益構造 [77]

  1. 主要4セグメント [86]
    1. 総合ICT事業(ドコモなど):NTTドコモを中心とした事業で、旧NTTコミュニケーションズのビジネスも含まれる。 [86]
    2. グローバルソリューション事業(NTTデータ):NTTデータが担い、海外展開も行っている。 [89]
    3. 地域通信事業:NTT東日本とNTT西日本が含まれる、従来の通信事業。 [91]
    4. その他:不動産やエネルギーなど、上記以外の事業。 [92]
  2. 売上と利益の構成比(2024年度) [93]
    1. 売上構成比:総合ICT事業が約4割、グローバルソリューション事業(NTTデータ)が約3割、地域通信事業が約2割を占める。 [93]
    2. 利益構成比:総合ICT事業(ドコモ)が約6割と収益の柱であり、グローバルソリューション事業が約2割、地域通信事業が約17%を占める。 [95]
    3. 携帯電話事業やプロバイダー事業が現在のNTTの主軸となっている。 [98]

1.3. 株価急反発の真の要因:光電融合「IOWN」への期待 [100]

  1. 新技術「IOWN」への期待 [100]
    1. NTTの株価が急反発している主な要因は、株式市場で大きなテーマとなっている光電融合技術「IOWN(アイオン)」への期待である。 [100]
    2. 投資家の関心は、足元の業績よりもIOWNの今後の展開に集まっている。 [391]

2. NTTが推進する光電融合技術「IOWN」の概要とロードマップ [103]

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NTTが推進するIOWN(アイオン)は、光と電気の変換ロスをなくし、データセンターの電力効率を大幅に向上させることを目指す革新的な光電融合技術である。

2.1. IOWNの目的と基本概念 [118]

  1. 光電融合の必要性 [121]
    1. 現在のインターネット通信は、光ファイバーで伝送された信号が、ルーターやスイッチで電気信号に変換されて利用されている。 [121]
    2. 光から電気への変換時には、熱発生や速度低下などのロス(無駄や非効率さ)が生じる。 [126]
  2. IOWNの目指すもの [130]
    1. IOWNは、この光と電気の変換ロスをなくすために、光と電力を融合させる技術である。 [130]
    2. この構想に適合したデバイスを製造する会社も設立されている。 [135]

2.2. IOWNのフェーズ別ロードマップ [136]

  1. IOWN 1.0(2022年度~):ネットワーク向けデバイス [137]
    1. ネットワーク向けの小型低電力デバイスを定義し、データセンター間の通信を光化する。 [138]
    2. これはAPN(オールフォトニクスネットワーク)とも呼ばれ、オフィス、通信設備、データセンター間を全て光ファイバーで接続する理想的なネットワークを目指す。 [163]
    3. 現状は、中継地点を通るたびに光と電気の変換が生じているため、ロスが発生している。 [168]
  2. IOWN 2.0(2025年度~):ボード接続用デバイス [139]
    1. データセンター内の基板(ボード)間の通信を光化する。 [139]
    2. 大阪・関西万博2025では、IOWN 2.0を活用し、電力消費量を8分の1にするコンピューターが展示された。 [149]
  3. IOWN 3.0(2029年度~):チップ向けデバイス [140]
    1. 半導体チップ間の通信を光化する。 [140]
  4. IOWN 4.0(2030年度~):チップ内光化 [141]
    1. 半導体チップ内部の回路を全て光化することを目指す。 [141]
    2. これにより電力効率を100倍に向上させることを目標としている。 [142]
    3. IOWN 4.0は光化の最終目標地点である。 [204]

2.3. IOWNの意義とAIデータセンターの電力問題 [206]

  1. NTTならではの発想 [206]
    1. NTTは通信技術に強みを持つため、通信から着手し、ボード、チップ、チップ内へと技術的に難しい領域に進めていくロードマップは、NTTならではの発想である。 [206]
    2. 通常、半導体は電気信号で処理されるが、これを光で処理させるという発想は、通信技術に強みを持つNTTだからこそ生まれた。 [209]
  2. AIデータセンターの電力問題解決への貢献 [211]
    1. IOWNが実現すれば、電力効率が大幅に向上し、AIデータセンターが直面する電力不足問題の解決に貢献できる。 [211]
    2. ハイパースケーラー(大規模データセンター事業者)にとって、電力確保はデータセンター建設における最大の課題であり、長期的に避けられないテーマである。 [214]
    3. NTTは、この電力問題解決のためにIOWNの研究開発に投資している。 [216]

3. IOWNの世界標準化に向けた規格争いとNTT連合の戦略 [218]

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IOWNは世界標準化を目指しているが、まだ合意は形成されておらず、NTTはインテル、ソニーを含む強力な連合を形成し、規格争いを勝ち抜く戦略をとっている。

3.1. 光電融合技術の規格争いの現状 [218]

  1. 世界標準は未確立 [218]
    1. 光電融合技術の世界標準はまだ確立されておらず、各社がそれぞれ一番を目指して開発を進めている段階である。 [218]
    2. NVIDIAなど、独自で光電融合技術を進めている企業も存在する。 [222]
  2. IOWNの実用化レベル [223]
    1. IOWNは実用レベルで見ると、先行しているプレイヤーがいるのは事実だが、NTTも本気で取り組んでいる。 [223]

3.2. IOWN連合の主要メンバーと狙い [226]

  1. ファウンディングメンバー(創設メンバー) [226]
    1. インテル:半導体メーカーとして、IOWNのチップ内光化に貢献できる。 [233]
    2. NTT:通信事業者として、通信技術に関する知見を持つ。 [233]
    3. ソニー:フォトニクス(光技術)に強く、イメージセンサーなどの分野で知見がある。また、過去の規格争いの経験も豊富である。 [233]
  2. ジェネラルメンバー(一般的な参加者) [252]
    1. AMD、味の素、藤倉、日立、ヒューレット・パッカード、JX、モルガン・スタンレー、村田製作所、沖電気工業、NVIDIA、クアルコム、ルネサス、レゾナック、ニゲン、住友、TDK、東京エレクトロン、東芝、横河電機など、多岐にわたる企業が参加している。 [252]
    2. NVIDIAも参加しており、自社開発と並行してIOWNにも関わることで、どちらがメインストリームになっても対応できる体制をとっている。 [264]

3.3. 規格争いの種類とソニーの歴史 [279]

  1. 規格争いの2つのタイプ [283]
    1. デジュール(De jure):公式に規格を定め、ロードマップを引いて皆がそれに従うようにする方式(例:移動通信技術のLTEや3G)。 [283]
    2. デファクト(De facto):各社が独自に開発を進め、結果的に多くの人に使われたものが標準となる方式。 [283]
    3. 規格争いは「生きるか死ぬか」の戦いであり、どちらかの技術が選ばれれば、もう一方は市場から消える可能性がある。 [284]
  2. ソニーの規格争いの歴史 [293]
    1. 勝利した事例 [316]
      • 3.5インチフロッピーディスク(1980年代) [316]
      • コンパクトディスク(CD)(1980年代) [318]
      • 8mmビデオ(1985年) [322]
      • ミニディスク(MD)(1992年) [327]
      • Blu-ray(2000年代後半) [360]
    2. 敗北した事例 [298]
      • ベータマックス(1975年):VHSとの争いに敗北。録画時間の短さが要因とされる。 [298]
      • ATRACフォーマット(1990年代半ば):MP3との争いに敗北。 [336]
      • i.LINK(1995年):USBとの争いに敗北。 [341]
      • メモリースティック:SDカードとの争いに敗北。 [344]
      • FeliCa(2000年代):国際標準化には成功したが、事業では安価なタイプA/Bに制圧され敗北。 [346]
      • UMD(2004年):PSPのメディアとして使われたが、ライバル不在で普及せず。 [353]
    3. ソニーはグローバルな規格争いの経験が豊富であり、その経験値がIOWN連合にとって重要である。 [364]

4. IOWNの将来性とNTTのビジネスモデル [371]

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IOWNが世界標準となればNTTに大きな収益機会をもたらすが、そのビジネスモデルの確立と、AIデータセンターの電力問題解決におけるIOWNの重要性が今後の焦点となる。

4.1. IOWNがNTTにもたらす潜在的チャンス [371]

  1. 収益の可能性 [371]
    1. IOWNが世界標準の企画となれば、NTTにはこれまでにない大きな収益の可能性が生まれる。 [371]
    2. これが株価に織り込まれる局面が来る可能性がある。 [411]
  2. データセンターの電力問題解決 [412]
    1. AIデータセンターの電力消費は膨大であり、ハイパースケーラーは電力確保に苦慮している。 [412]
    2. IOWNのような光電融合技術は、電力消費を大幅に削減できるため、データセンターのランニングコスト削減において最重要テーマとなる。 [414]

4.2. 規格化後のビジネスモデルと課題 [376]

  1. ビジネスモデルの確立が重要 [376]
    1. IOWNが企画として採用されたとしても、NTTがどのように収益を上げるか、ビジネスモデルを確立できるかが重要である。 [376]
    2. IOWNデバイスを製造する会社の売上が爆発的に伸びるのか、クアルコムのように特許収入を得るのかなど、今後の展開に注目が集まる。 [381]

4.3. アナリストの視点と長期的な期待 [392]

  1. 長期的な時間軸での評価 [392]
    1. IOWN 4.0の実現が2030年頃と聞くと遠く感じるかもしれないが、アナリストは通常3~5年先の業績を予想するため、6年後の2032年という時間軸は長期投資においては普通である。 [392]
  2. 業績予想へのIOWNの組み込み [398]
    1. ロードマップに示された2029年や2032年までのIOWNの進展を、アナリストは業績予想に含めて考える必要がある。 [398]
    2. IOWNへの期待は、当然株価に影響を与える可能性がある。 [401]
  3. NTTグループ全体へのインパクト [402]
    1. IOWNがNTTグループ全体の収益にどれほどのインパクトを与えるかは、まだ別の議論である。 [402]
    2. 今期の会社予想では、NTTの利益成長はフラットであり、株式投資家から見ると、配当は安定しているものの、株価がそれ以上上がらない可能性もある。 [405]
    3. 会社としては、IOWNのような潜在的なチャンスを活かし、グローバルに企画が採用されることで、これまでにない収益の可能性を見せる必要がある。 [408]