1. AIブームと半導体市場の動向 [0]

thumbnail 2023年はAI元年と呼ばれ、ChatGPTの登場によりAI技術が急速に進化し、それに伴い半導体市場、特にGPUへの投資が過熱している。

1.1. ChatGPTの衝撃とAIの進化 [0]

  1. 2023年はAI元年 [11]
    1. ChatGPTの登場が大きな衝撃を与えたためである [13]
  2. ChatGPTの機能と進化 [14]
    1. オープンAI社が開発したAIチャットボットであり、人間のように対話形式でやり取りが可能である [14]
    2. プログラミングコードの自動生成も可能である [17]
    3. アメリカの司法試験で上位10%に入るほどの高得点で合格するレベルに進化している [19]
    4. 学習パラメータ数を増やすことで精度が向上すると言われている [20]
    5. まだ発展途上であり、今後も成長が期待されている [22]
  3. 製造業への影響 [23]
    1. 制御構築の半自動化が可能になる [23]
    2. 制御プログラムの最適化やリファクタリングも可能である [28]
    3. 将来的にはロボットのティーチングも容易になる可能性がある [30]
    4. デジタルツインとの応用も期待され、現場を変える可能性を秘めている [37]
  4. ChatGPTの進化の歴史 [39]
    1. GPT-1(2018年): 1.2億パラメータ、教師なし学習で回答できる点が革新的であった [41]
    2. GPT-2(翌年): 15億パラメータに増加したが、長文回答の精度には課題があった [46]
    3. GPT-3: 1750億パラメータと規模が100倍になり、人間のような文章生成が可能になった [49]
    4. GPT-3.5(2022年11月): 3550億パラメータ、チャット形式での対話が可能になり、ユーザーからのフィードバックも学習するようになった [53]
    5. GPT-4: 1.75兆パラメータに増加し、アメリカの司法試験に楽々合格するレベルまで精度が向上した [58]
  5. Googleの危機感とAI開発競争の激化 [61]
    1. GoogleはChatGPTの登場に危機感を覚え、「コードレッド」を発令した [61]
    2. Google版対話型AI「Bard」をリリースしたが、デモでの誤回答により一時的に時価総額を約14兆円失った [65]
    3. その後、Bardは40言語に対応するなどサービスを拡張し、株価も回復した [70]
    4. AI開発競争は激化しており、ChatGPTが既存AIの活用範囲を塗り替えたことは間違いない [71]
  6. AIのビジネス活用 [72]
    1. パナソニックコネクトでは社内利用環境を整備し、マニュアルの自動化などに活用している [74]
    2. 知らないうちにAIの恩恵を受け始めている状況である [77]

1.2. AIの躍進を支える半導体と投資の過熱 [78]

  1. AIに不可欠な半導体 [78]
    1. AIの生成にはGPU(Graphics Processing Unit)が不可欠である [87]
    2. 半導体がないとAIソリューションは提供できないため、AIの躍進の裏には半導体の躍進がある [89]
  2. NVIDIAの台頭 [91]
    1. GPU市場でトップを走るNVIDIAは、株価が急上昇し、半導体企業として初めて時価総額1兆ドルを突破した [91]
    2. これはトヨタの時価総額の3倍以上にあたる [95]
    3. NVIDIAのGPUはAIトレーニングに不可欠であり、需要が急増している [100]
    4. NVIDIAはCUDAなどの使いやすいソフトウェアも提供しており、AMDをリードしている [103]
  3. Microsoftの巨額投資 [106]
    1. MicrosoftはOpenAIに100億ドル(約1兆円以上)の追加投資を表明した [106]
    2. この額は日本の経済産業省の年間補正予算をはるかに凌駕する [108]
    3. MicrosoftはAIトレーニング用のスーパーコンピューターも開発しており、その性能は世界5指に入ると言われている [116]
    4. このスパコンには28万5000基のCPUと1万基のGPUが必要とされ、建築費用は数十億ドルに上る [119]
    5. これらの動きから、AIを巡る半導体投資が過熱していることがわかる [120]
  4. GPUの争奪戦 [121]
    1. NVIDIAの最新GPU「H100」は1台500万円と高価である [123]
    2. 通常は8個まとめて使用され、その価格は6600万円にもなる [129]
    3. ChatGPT-4には1万〜2万5000個、Meta社は2万1000台、Microsoft社は最大4万台のH100を導入している [134]
    4. Microsoftの投資額は単純計算で2000億円以上になる [138]
    5. 大規模言語モデルの進化には、さらに多くのH100が必要とされている [141]
    6. H100は粗利が90%と言われており、NVIDIAの株価上昇の要因となっている [145]
    7. AI半導体への投資は引き続き苛烈であり、半導体の進化がある限りこの状況は続くと予想される [154]
  5. 演算量の総量と電力問題 [156]
    1. 今後の半導体の戦いは、演算量の総量をかけたものになると言われている [156]
    2. 経済産業省の資料によると、2030年には計算量が2018年比で70倍に増加すると予想されている [159]
    3. これに伴い、サーバーの使用電力は2030年には15.8倍になると言われており、電力不足が大きなボトルネックとなる可能性がある [161]
    4. 情報のやり取り(トラフィック量)も2030年には2018年比で30倍、20年後には4000倍に増加すると予測されている [163]
    5. 大量のデータ処理は国のタスクとなっており、演算争奪戦は半導体争奪戦に直結している [167]

2. 次世代半導体の核心技術:パッケージとHBM [172]

thumbnail AIブームで次に成長する半導体は、パッケージ技術とHBM(高帯域幅メモリ)である。特に、半導体の後工程を担うパッケージ装置の世界シェア6割を占めるTOWAの技術動向を追うことで、半導体市場の投資動向を予測できる。

2.1. パッケージ技術の重要性とTOWAの役割 [172]

  1. 半導体パッケージの概要 [172]
    1. 半導体製造装置を追うことで、半導体市場の投資動向を予測できる [173]
    2. パッケージ分野で世界をリードする日本の企業「TOWA」の動向が重要である [174]
    3. 全ての半導体の6割がTOWAのパッケージ装置によって生産されており、TOWAは日本の隠れた世界ナンバーワン企業である [180]
    4. TOWAがなければ世界の半導体は作れないと言えるほど、圧倒的なシェアを誇る [182]
  2. パッケージの役割 [188]
    1. 半導体はチップ単体では動作せず、パッケージによって基盤に接続される [190]
    2. パッケージの主な理由は以下の通りである [195]
      1. 実装の容易性: ICチップを基盤に吸着しやすくする [197]
      2. 外傷からの保護: 外部からの物理的な損傷を防ぐ [200]
      3. 電気的接続: PCBA(プリント基板アセンブリ)との電気的な接続を果たす [201]
    3. パッケージは半導体の後工程であり、AIブームによりその重要性がさらに増している [203]
  3. 半導体進化の二つの核心 [205]
    1. モアムーア(More Moore): 既存の微細化技術を追求し、トランジスタをより小さくする競争である [208]
    2. モアザンムーア(More than Moore): パッケージ技術によって性能を向上させる革新である [217]
      1. 近年までパッケージはイノベーションの余地が少ないと思われていたが、現在では注目されている [219]
  4. TOWAのパッケージ製造技術 [220]
    1. TOWAのパッケージ装置は、樹脂金型で成形を行う [221]
    2. TOWAの革新性は、樹脂の注入穴を増やすことで、樹脂が全体に行き渡りやすくなり、品質が安定した点にある [228]
    3. 製造工程は、半導体チップを金型にセットし、真空引き後に樹脂を注入して成形する [237]
  5. TOWAが製造可能なパッケージの種類 [244]
    1. マルチプランジャーシステムやBGA(Ball Grid Array)など、多種多様なパッケージに対応している [246]
    2. ウェハーレベルパッケージやLED、ECU(車載用電子制御ユニット)など、様々な用途のパッケージを製造できる [253]

2.2. パッケージ技術の革新とHBMの重要性 [259]

  1. パッケージ革新の論理 [259]
    1. パッケージ技術の革新により、CPUとメモリを1つのパッケージ内に埋め込むことが可能になった [262]
    2. これにより、半導体間の通信速度が向上し、処理速度が高速化する [264]
  2. TSMCの最先端パッケージ技術 [266]
    1. TSMCは、DRAM、CPU、GPUなど様々なチップを1パッケージに統合する技術を開発している [266]
    2. 最先端のパッケージ技術は、ほぼ9割方TSMCが独占していると言われている [272]
  3. パッケージ技術の難しさ [275]
    1. 樹脂は生き物: 樹脂の扱いは非常に難しい [277]
    2. インターポーザーの微細化: チップ同士をつなぐインターポーザー基盤の銅配線は、将来的に1.5ミクロンという極めて小さいサイズになる [278]
    3. ウェハーレベルパッケージの大型化: AI半導体は多くのチップを搭載するため、ウェハーレベルパッケージも大型化している [285]
    4. 樹脂の浸透とチップのずれ: 大判パッケージでは樹脂を行き渡らせるのが難しく、チップがずれないようにするコンプレッション技術が必要となる [288]
  4. TOWAの複合技術 [292]
    1. コンプレッション技術: 非常に精密な制御が必要なコンプレッション技術を持つ [292]
    2. 超精密な金型技術: ミクロン台、サブミクロン台の金型を製造する技術を持つ [295]
    3. 工具の自社開発: 加工技術だけでなく、超精密な工具も自社で開発・販売している [297]
    4. TOWAはこれらの複合技術を統合・すり合わせることで、競合他社が追いつけない強みを持っている [303]
    5. このため、TOWAのパッケージ装置の動向を追うことで、半導体業界全体の投資動向を予測できる [304]
  5. HBM(高帯域幅メモリ)の重要性 [341]
    1. NVIDIAのGPUには、HBM(High Bandwidth Memory)というメモリが必要不可欠である [341]
    2. HBMはインターポーザー専用の規格であり、コストが高い [346]
    3. 製造は主にSKハイニックスが請け負っており、同社への投資が活発である [348]
    4. マイクロンやサムスンもHBMの製造を求められているが、技術難易度とコストの高さから難しい状況である [350]
    5. HBMはDRAM全体の5%程度の市場規模だが、年間30%の成長が見込まれている [352]
  6. HBM製造の技術的課題 [353]
    1. TSV(Through-Silicon Via): DRAMに貫通穴を開ける技術で、穴の大きさが線幅の数百倍と大きく、回路を避けて描く必要がある [354]
    2. TSV内部の銅メッキ: 穴の中は抵抗値が高く、絶縁膜や銅メッキを均一に行き渡らせるのが非常に難しい [359]
    3. 小ピッチバンプへの樹脂充填: マイクロバンプ(15ミクロン)のような小ピッチのバンプに樹脂を正確に充填する必要がある [368]
  7. TOWAのHBM向け技術 [371]
    1. TOWAは細部に樹脂を浸透させる技術を持っており、HBMのコンプレッション成形においてほぼ100%のシェアを誇る [371]
    2. TOWAの技術により、HBMの歩留まりは7割から99.99%に向上したと言われている [375]
    3. 従来の充填方式から、チップを樹脂に「ポチャ付け」する世界初の方式に変えたことで、アンダーフィル工程も集約できた [376]
    4. この技術がTOWAの強みである [381]

2.3. 各国の半導体投資動向 [305]

  1. 米中デカップリングの影響 [305]
    1. 米中貿易摩擦により、最先端半導体の製造が中国以外(マレーシア、フィリピンなど)に移管されている [305]
    2. これにより、中国以外の地域でのパッケージ投資が活発化している [307]
  2. テキサス・インスツルメンツの大規模投資 [307]
    1. 半導体不況期に大規模投資を行い、次回の好況期に市場を制圧する戦略をとっている [307]
    2. 世界のアナログ半導体(ディスクリート半導体)市場で、工場拡張・新設を断行している [308]
  3. ヨーロッパのパワー半導体投資 [310]
    1. チップスアクト法により助成金が動き、コンチネンタル、STマイクロエレクトロニクス、インフィニオンなどのパワー半導体企業への投資が活発である [310]
    2. 特にモジュール化された高付加価値のパワー半導体への投資が集中している [315]
    3. 2024年度の装置関連投資は100億ドル(約1兆5000億円)と予想され、そのほとんどがパワー半導体向けである [317]
    4. これは2023年の50億ドルから倍増しており、後工程の投資を含めると約120億ドル(約1兆8000億円)に迫る規模である [320]
    5. アナログ・パワー半導体分野では大規模投資が相次いでいる [323]
  4. 中国の自国生産への大規模投資 [324]
    1. 米国や欧州からの制裁を受け、中国は自国での半導体生産を強化している [324]
    2. 不景気と言われる中でも、スマホやPC向けのDRAMやNANDメモリの自国生産への切り替えを進めている [327]
    3. 他のメモリ業界が不況で投資が停滞する中、中国だけは投資が活発である [331]
    4. パワー半導体分野でもBYDなどの企業が性能を向上させており、30社以上の製造会社が存在する [333]
    5. 中国は巨大な市場を背景に、自国での半導体投資を積極的に行っている [337]
  5. AI関連の活況とメモリ市場の明暗 [339]
    1. AI関連は依然として活況であり、TSMCの仕事は来年まで満杯である [339]
    2. NVIDIAのGPUにはHBM(高帯域幅メモリ)が不可欠であり、SKハイニックスが主要な製造を担っている [341]
    3. サムスンやマイクロンもHBMの製造を求められているが、技術的難易度が高い [350]
    4. 半導体投資全体では明暗が分かれている [382]
      1. 活況な分野: デカップリングによる後工程の東南アジア移管、中国の自国生産、アナログ・パワー半導体、AI半導体(HBM含む) [383]
      2. 停滞している分野: スマホ・PC市場は飽和状態で、コロナ特需明けの在庫調整が続いている [385]
      3. NANDやDRAM市場は依然として冬の時代が続いている [390]